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緊急レポート【暖かくも切ない妖怪たち】

この記事はエイプリルフールのネタでした。

ご覧いただいた皆様、お騒がせいたしました。

 


 

 

 

緊急レポート【暖かくも切ない妖怪たち】

 

時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

CRAZYは現在、書籍『本当に出会える妖怪大全集』(発行:民明書房、発売日:5月5日、予価:12,960円〈税込〉)の制作に向けて作業を進めております。

 

多くの文献を読み進めるうちに、妖怪の生態について、いくつかの事実はわかってきました。

妖怪はけっして珍しい生きものではなく、人々のすぐそばに生息し、人間社会の様子を伺っています。ただその内気な性格のため、自ら人前に姿を現すことを苦手にしているらしいのです。

しかしその程度の内容では原稿におこすことはできません。そのため、より具体的な生活や行動パターンを探るために、妖怪の目撃情報が多数寄せられている山形県の、とある村に取材に向かうことにしました。

今回はその取材の最中で遭遇した、様々な摩訶不思議な出来事のなかから、ごく一部をご報告させていただきたいと思います。


 

 

その1】心優しき、からかさ小僧

午前10時、山形駅に降り立った我々はバスを乗り継ぎ、

さらに終点のバス停から4時間程歩いた山中にある、

とある村へと入っていきました。

この付近には、古くから河童や雪女などが棲むと言われ、専門家の間では

「この村に入らずして妖怪を語る事なかれ」とも言われる、

妖怪をネタにするものが訪れないわけにはいかない土地なのです。

何十年も前に村人たちは一人残らず村を離れ、既に廃墟となっています。

我々は比較的頑丈な一軒の空き家を見つけ、

そこを取材の拠点とすることに決めました。

我々は翌日からの妖怪探索のために、早々に寝袋に潜り込みました。

しかし眠りにつこうとしていると、突然、不思議な音が聞こえてきたのです。

それはまるで布がふれあうようなカサカサ、カサカサとした奇妙な音です。

眠い目をこすりながら、うっすらとまぶたを開くと

なにやら人の足のようなものが見えます。

「そんなところで寝たら、風邪をひくよ」

何か暖かさを感じるその声に誘われて見上げた我々の目に

不思議な物体が飛び込んできました。

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傘から生えた一本足。

からかさ小僧です。

驚く我々に、優しく話しかけてきます。

「人間に会うのは久しぶりだけど、こんなところで何をしているんだい?」

我々は今回の書籍の概要を説明し、

からかさ小僧の日々の暮らしについて尋ねました。

なんでも、本来は人間が大好きなからかさ小僧は人のすぐそばで暮らしていたらしいのですが、姿を見た人間たちは慌てふためいて逃げてしまうらしいのです。

ある時、びっくりした子どもが車道に飛び出し、トラックに轢かれそうになった姿を目の当たりにし、ショックを受けてこの村へ移り住んだとのことです。

「本当はもっと人間と話をしたいけど、人間に嫌な想いをさせるのは悲しいんだ」

そう語るからかさ小僧の目には、うっすらと涙が浮かんでいました。

「河童は食いしん坊だから、食べ物をあげれば喜んで話をしてくれるよ。雪女は男性には優しいから何も問題はない。ただ、結婚していることは内緒にしてね。」

ひととおり取材を終えた、からかさ小僧は

他の妖怪の情報も教えてくれました。

「久しぶりに話ができて嬉しかったよ。ありがとう」

そう言い残して去っていく、からかさ小僧の後ろ姿には

寂しさが漂っていました。


【その2】笑顔まぶしい食いしん坊、河童

からかさ小僧からの情報をもとに、

打ち捨てられた畑に生えていたキュウリを探し出した我々は

河童が現れるという古い川に向かいました。

上流に向かって川沿いを進んでいく我々の目に

ゆっくりと動く緑の物体が移りました。

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よく見ると手にキュウリをもって川辺を歩き回っています。

河童です。

キュウリと緑の組み合わせ、紛れもない河童です。

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遠くから声をかけてみますが、少しもこちらを向いてくれません。

からかさ小僧から聞いた話を思い出した我々は、食べ物でつることにしました。

「ちょっと話を聞かせてくれませんか。キュウリをあげるから。」

すると河童は振り向き、喜び勇んでこちらに駆け寄ってきました。

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「キュウリくれるの?」

我々は、さっそく河童にキュウリをわたすと笑顔で食べ始めました。

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食べている河童にさっそく取材を申し込みますが

まったく話を聞いてくれません。

普段の生活やこの村に棲む理由を尋ねてもキュウリに夢中です。

取材にならないことを悟った我々は、川を離れることに決めましたが

食べ終わった河童はさらにキュウリをねだってきます。

「キュウリ!キュウリ!! キュウリ!!!」

うるさく追いすがる河童から、逃げるように我々はその場を後にしました。


【その3】愛の伝道師、雪女

翌日は雪女の捜索のため、山中へと分け入りました。

身体中傷だらけになりながら険しい山道を5〜6時間かけてのぼりきったところで

山頂付近にたどり着きました。

辺り一面の銀世界。

絶世の美女といわれる雪女にふさわしい

美しい景色が広がります。

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さらに雪の山中を歩き回ること2時間、

林を抜けた先に、美しい白銀の髪をもつ人影が目に入りました。

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あれは、ひょっとして…

「雪女さんですか?」

恐る恐る声をかけると、こちらを振り向きました。

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振り向いた女性は、雪に反射した光と相まって

目がくらむ程の美しさです。

「あら、いい男じゃない。私に何か御用?」

このたびの取材の内容を伝えると、雪女は嬉しそうに語りだしました。

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「私って見ての通り、美しさが身体中から溢れ出てるじゃない。昔は人里近くで暮らしてたんだけど、男たちが言い寄ってきてうるさいから、ちょっと遠くで生活することにしたのよね。中には本当にしつこい男もいてさ〜」

尋ねてもいないのに、過去の男遍歴の話が止まりません。

「雪女さんにとって、愛の最終形態は何だと思いますか?」

「そりゃあやっぱり、大好きな男と一緒に暮らすことよ。ただ私の場合は誰かに決めると他の男たちがうるさいから、なかなか絞れないのよね。って、あら?その薬指の指輪…」

話を急に止め、私の左手をじっと見つめる雪女の顔が、急に曇ってきました。

「あなた、もしかして既婚者?」

「はい、実は昨年結婚したばかりで…」

雪女の表情が変化するとともに、抜けるような青空に雲が広がっていきます。

「結婚して私を捨てるのね。あの男のように」

「え?」

「許さない、絶対に許さないわよ!!」

「ひょっとして雪女さん、捨てられたんですか?」

「ムキーッ!!」

周囲は一面の猛吹雪に変化し、雪女は鬼のような形相で襲いかかってきます。

危険を察知した我々は、雪山を転げ落ちるように逃げ出しました。

なんとか麓までたどり着いた我々は、急いで荷物をまとめ村を離れましたが

あのときの雪女の恐ろしい叫び声は、今でも耳の奥にこびりついています。


以上が今回の取材の体験レポートです。

河童を探している途中に出会った小豆洗いや、雪女から逃げながら目撃した、スキーを楽しむねずみ男など、ご紹介したい出来事は数多いのですが、画面構成の都合上ここまでにさせていただきたく思います。

詳細は書籍をご購入いただければと思いますので、5月の発売日までお待ちいただければありがたく思います。

何卒よろしくお願いいたします。



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